何世紀にも渡って継承される手仕事。ネパールではこれらは、どこかに大事にしまっておく特別なものではなく、今でも普通に生活の中で息づいています。木彫、金彫、石工、タンカ画(Thangka、仏画)の絵師など、何世紀にもわたってその技術を仕込み、継承してきた職人達に師事して、その技を学んでみるのも旅の醍醐味でしょう。
カトマンズ盆地そのものが、各年代・各宗教宗派の寺院建築の博物館。シカラ(Shikhara)様式、マッラ(Malla)様式、ラージプット(Rajiput)様式、イスラム(Islam)様式を始め、それらの複合形態も含めてほとんど全ての宗教建築が、各年代ごとに建てられてきており、それらすべてを見て歩くことができます。関係するあらゆる職人技が生活の中で淡々と継承されているので、今でも普通に建築や彫刻のメンテナンスが可能です。
ネパールの彫刻・建築史の中でも金字塔的存在なのがアルニコ(Arniko)です。12世紀後半にネパールに生まれ、この一帯で大活躍したこの天才的芸術家は、中国・北京にある妙応寺白塔(Miaoying Temple, White Stupa)の建設者としても知られています。元の始皇帝・クビライカーンにその才能を認められてチベットや中国本土で広く多数の仏塔や寺院を建築し、中国大陸におけるパゴダ様式(Pagoda)の開祖とされています。
カトマンズや、ネパールのその他の地域で見られるこうした芸術的作品群は、それだけネパールが文化や宗教を重視しながら繁栄していたという過去を、証明してくれるものでもあります。知る人ぞ知るククリナイフ(Khukuri knife)も家庭用のナベカマも、金彫技術なくしては作れないものですし、タンカ画や木彫金彫の仏像など、街角で普段目にするさまざまな工芸品・民芸品・生活用品が、そうした技術に裏打ちされて製作されてきました。このほかにはカーペットやヒマラヤ和紙、ミティラ(Mithila)様式の工芸品や絵画、籐や竹でできた日用品など、たくさんの伝統工芸品を楽しんで頂けることと思います。